Written by Kazuhiko Noguchi

【黄連(おうれん)】漢方薬に含まれる生薬の効能【生薬解説】

生薬解説

【黄連(おうれん)】漢方薬に含まれる生薬の効能【生薬解説】

ポイント

治火の主薬といわれ、清熱・燥湿・解毒作用各作用の優れた実熱瀉火の重要薬。特に心火を冷ます。

心中の煩悸を主治する。
心下痞・嘔吐下痢・腹中痛を治す。黄連の味は苦いが、その苦みが胸苦しいものを治す。

黄連の苦は心煩を治するなり。是れ性の能たり。張仲景用ひて、心下痞・嘔吐・下利の証を治するなり。故に心煩の状無き者に、之れを試むるに効なし。心煩を加ふる者は、その応響の如し。
引用元:薬徴・吉益東洞著

注意点

黄連に対する感受性の差は大きい為、使用量に注意。黄連服用による腹中冷感、もたれ感、下痢などの時は呉茱萸湯で治す。また事前に呉茱萸や乾姜、または桂枝や木香などを配合する。
寒性と燥性が強く、多量・長期服用で脾胃を損傷することがある。実熱証以外には使用しない。脾胃虚証には禁忌。

黄連の漢方的効能

  • 心中の煩悸を治す:黄連の味は苦いが、その苦みが胸苦しいものを治す。
  • 清熱瀉火:①実熱証の心火や胃熱を冷ます。(黄連解毒湯、牛黄清心丸、三黄瀉心湯)②寒熱錯雑証の消化器疾患に。(半夏瀉心湯、生姜瀉心湯)
  • 清熱燥湿:よく熱を冷まし、強力に湿を除く。大腸湿熱による発熱・腹痛・下痢に。(葛根黄連黄芩湯)
  • 清熱解毒:熱毒を冷ます。本作用に特に優れる。熱毒による温病・細菌性下痢・皮膚化膿症・火傷・咽頭腫脹など。(清上防風湯)

※引用元:漢方誠芳園薬局・新井吉秀先生・黄連の解説

①寒性
②鎮静解熱作用

黄連には鎮静作用があって、瀉心湯、黄連阿膠湯は不眠、イライラ、ノイローゼなどに用いられる。
朱砂安神丸も朱砂のような安神薬(鎮静剤)と配合して、不眠、精神不安、心悸亢進などに用いられる。
その作用は頭蓋内の充血を除いて、脳の充血による精神不安を鎮静させると考えている人もある。
また大黄の瀉下作用と併せ、脳の充血を腹腔の方へおろすと考えている人もある。
このようなことは一応仮説として、いずれ証明しなければならないであろう。

黄連と桂枝を配合したものは交泰丸で、不眠や鎮静に用いる。(呉茱萸を配合した左金丸同様)苦いのである。瀉心湯は苦くないが、黄連と桂枝の交泰丸や、黄連阿膠湯は苦い。従って苦味の部分は鎮静には関係がないのではなかろうか。

黄連と甘草を煎じると苦味は少なくなるが、このときの沈澱は水で薄めると溶けるようで、あまり強い結合ではなさそうだ。脳充血による精神不安を鎮静。怒りや興奮を鎮める。EX.黄連解毒湯

黄連は清熱瀉火の剤で、清心除煩(心の熱を清し、胸中の煩すなわちもだえを除く)の働きがある。心火亢盛して煩燥して眠られない者に用いる。精神的興奮も鎮め、色々な精神的悩みやストレスを除いて眠られるようになる。慢性で長期にわたる不眠には、黄連単味や、苦寒の薬ばかりでは効果がなく、かえって桂皮を少し加えるとよく効く場合がある。

理由としては、

①桂皮には脳の血管に対して拡張させる作用があり、黄連の作用を強くするのではなかろうか。
②また、左金丸も黄連に呉茱萸を少し加えている。これは、黄連の寒が強すぎるのを抑えるためのものなのか。
③昔から諺に言う「甘いも、鹹いも塩の味」の如く、砂糖単味よりも少量の塩を加えて方が甘みを強く感じるのに似たようなものか。

いずれともまだよく分からない。いずれにしても、三黄瀉心湯、黄連解毒湯を用いるほど上部に充血や出血の 強くない場合には良いようである。清熱薬の配合の方法上記の各種の清熱薬をどのように配合するか。発熱、炎症に対して清熱の薬物を用いて治療する場合、高熱や炎症症状の強いときには、清熱瀉火の薬物を多量に使用する。

石膏にしても100gぐらい使用することもあり、充血と充血による腫脹の強いとき、すなわち赤く腫れているときには、黄連を多く用いる。黄連、黄ゴン、黄柏、山梔子などは、清熱の作用と同時に体内の湿を燥かす、清熱燥湿の働きがある。したがって湿熱のある場合にはよいが、体内に湿がなく、燥熱の場合にはよくない。

上述の熱性疾患では、発熱のため、または発汗、嘔吐、下痢などがあれば、体内の水分が失われる。気分病の時期に用いる白虎湯であっても、体内の水分が失われることを考え、石膏、知母、と同時に粳米、甘草を加え、白虎加人参湯では更に人参を加えて体内の脱水に対し、配慮している。

竹葉石膏湯も、熱病で、おおむね熱がとれた後、余熱があって脱水し、皮膚もカサカサして潤いなく、胸が苦しく、口渇し、咳や嘔吐のある場合に用いる方剤である。熱に竹葉、石膏を主に配し、嘔吐、咳嗽に半夏、脱水には人参、粳米、甘草にさらに滋陰薬の麦門冬を加えている。

黄連、黄ゴン、竜胆、黄柏などは、炎症の浮腫を除き、湿熱を去るが、体内の水分の不足するものにはよくない。そこで同じく消炎の作用があって水分を貯える清熱涼血(や滋陰薬、補血薬など)の薬物を組み合わせて拮抗させるのである。

出血のある場合は、止血作用もあるので、ちょうどよい。しかし、出血のない場合も、また局所性の炎症では全身的な発熱がなくても、消炎の意味で清熱涼血薬を配合する。

したがって清熱涼血の薬は、温病の営分、血分の熱ばかりでなく、局所的炎症の場合にも上記の理由から配合するのである。たとえば、黄連と生地黄の配合は、中医学的に言うと”瀉火して陰を傷らず”で、薬方では黄連解毒湯に四物湯を加える例に似ている。化膿性炎症にはもちろん清熱解毒薬を配合する。

③消炎作用。止血効果

細動脈を収縮して炎症性充血を抑えるので止血作用もある。出血、ことに体の上部における出血の止血には黄連がよく、血腫の駆オ血には大黄が黄連より優れている。

炎症や動脈の充血を抑制し、出血を止める。動脈の充血や、細動脈側の血管を収縮させて止血するのではないかと考えている。その特徴は、動脈に充血があり、血管が拡張しているということがその眼目であろうと思う。

注意
内出血の場合、出血した血液が貯まっているのを除くときには大黄を加えるのがよい。外出血の止血を望むときには、黄連、蒲黄炒を加えるのがよい。

治打撲一方には、桂皮・川キュウ・丁香・木香など脳に充血をおこさせる薬物が多いため、脳内出血、頭部挫傷の時、受傷直後は注意を要すと考えている。黄連・大黄を多く加入して、川キュウ・桂皮・丁香などは控えるべきである。

1)身体上部の炎症に
目、舌、口内、歯肉や頭部の炎症に。

2)皮膚の炎症に
日光皮膚炎、化膿性炎症などに。

3)黄疸を伴う炎症に
肝炎、胆のう炎に。

中国では、広範な抗菌作用、また抗原虫作用、抗ウイルス作用や抗真菌作用もあると記載されている。細菌性の下痢、腸炎、口内炎、化膿性炎症、皮膚の炎症など、広くいろいろの炎症の治療に用いられる。

④健胃作用
胃粘膜の充血性炎症を治す。
制酸作用がある。
EX.半夏しゃ心湯

⑤降圧作用

⑥抗菌作用
細菌性下痢、腸炎に。
化膿性炎症に。

⑦黄連に対する感受性の差が強いため、その服用により、胃のもたれ感、腹中冷感、下痢などを訴えるときには、呉茱萸湯で治療、または、まえもって呉茱萸や乾生薑などを配合する。

黄連の味は非常に苦く、当薬(センブリ)同様苦味健胃薬となる。黄連は消炎作用があるため、胃に炎症があり、食欲不振のとき用いる。

次に述べる充血や炎症を抑制する作用がある。それで胃カタルや胃炎があるとき、黄連を用いる場合は熱証である。熱証の場合、脉は数、舌は紅く、口や舌は乾燥し、口渇があって水を飲み、 それでも尿量は少なく、尿の色は濃い。顔色や結膜も赤い。

大便は色が濃く、便秘傾向があり、また便臭が強い。胃の粘膜は充血して赤い。出血、糜爛のある時によい。大黄黄連瀉心湯は、大黄と黄連の二味からなる単純な方剤で、沸騰している湯で振り出して服用する。

“酒をのみすぎた翌朝、胃部が痞え、食欲がなく、重苦しい、少し悪心がある”ときに服用すると、センブリや黄連の苦味を想像して、どんなに苦い薬かと思いきや、全く苦くない。

はじめは胃が悪いため舌の味覚が落ちているのであろうと考えていた。そこで、三黄瀉心湯をつくって服んでみたところが、これも苦くない。

黄連、黄ゴン、大黄の各々を振り出してみた。黄色透明の黄連単味の振り出しが最も苦く、その味は長くあとまで残った。黄ゴンは煎茶位の苦味しかない。大黄は渋かった。

大黄と黄連の浸出液を混合すると、混濁して沈澱が生じた。そして苦味はなくなるのである(この沈澱物は、稀塩酸や弱アルカリでは溶けないようである)。

そこで、黄連の苦味が効くのではない。私自身(山本巌先生)の経験では、酒をのみ過ぎた翌朝の急性胃炎や心下痞は、主に大黄の効ではないかと思う。

だが大黄単味を振り出して服用すると嘔吐する(平素ならば嘔吐しないが、二日酔いのときは胃が悪く嘔吐するのであろう)。黄連を加えるとのみ易く、嘔吐しない。漢文をやっておられる先生方に時々、「三黄瀉心湯は苦いか」と質問するとほとんど苦いと答えられる。

黄連単味の浸出液と、三黄瀉心湯のどちらが苦いかと尋ねると、三黄瀉心湯の方が苦いと思っておられる方も割合に多いものである。ベルベリンという成分はただ腸炎の場合に有効なので、鎮静、止血、解熱、その他の消炎にはあまり関係ないのではなかろうかと考えている。

大黄黄連瀉心湯の大黄2g、黄連1gを熱湯で振り出し、熱い湯液を服用すれば、それほど寒涼剤とは思われない。出血の場合に、瀉心湯は一度冷やして冷服させなければ、かえって出血がひどくなるであろう。

林億以来、大黄黄連瀉心湯の黄ゴンの有無が問題になる。傷寒に用いることのない現在では、 明確には実証し難いが、宿酒、二日酔いによるものは、黄ゴンはあってもなくてもよい。

分類 清熱燥湿薬
基源 キンポウゲ科オウレンなどの根茎
薬性 寒性
用法 0,5〜3g
注意点 寒性と燥性が強く、多量・長期服用で胃腸を損傷することがある。実熱証以外には使用しない。脾胃虚証には禁忌。

黄連が含まれる漢方処方薬

黄連解毒湯、温清飲、三黄瀉心湯、半夏瀉心湯、黄連阿膠湯、黄連湯、乾姜黄連黄芩人参湯、葛根黄芩黄連湯など。

引用参考文献

   

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