Written by Kazuhiko Noguchi

【漢方処方解説】炙甘草湯(しゃかんぞうとう)【実践的な運用】

漢方処方解説

こちらの処方解説では、今までの書籍での学習と漢方研究会で習得した内容をベースに、実際に患者さまに処方し、感じたことや自分の考えを記載しています。

目次

炙甘草湯の出典

傷寒論/太陽病の脈証并びに治を弁ず 下

条文(訓読)

「【第177条】傷寒 、脈結代、心動悸するは、炙甘草湯之を主る。」

条文(現代語訳)

「傷寒にかかり、脈が脈が早かったり結滞し、心臓が動悸するものは炙甘草湯がよい。」

※脈が早かったり結滞するを普通の状態に戻すから、別名:復脈湯ともいう。

金匱要略/血痺、虚労の病の脈証ならびに治〔第六〕

血痺、虚労の病の脈証ならびに治…邪が陰分に入り、血が巡らず渋滞し閉じる意(血痺)、体力が衰亡して疲労を主訴とする(虚労)

条文(訓読)

「千金翼の炙甘草湯は、虚労不足、汗出でて悶し、脈結、心悸を治す。行動常の如くにして百日を出ずして危し。急なる者は十一日に死す。」

条文(現代語訳)

「千金翼の炙甘草湯は、疲労により気力体力が不足し、汗が出てもだえ苦しみ、動悸し、脈が飛ぶものを治す。」

金匱要略/肺痿、肺癰、咳嗽、上気の病の脈証と治〔第七〕

条文(訓読)

「『外台』の炙甘草湯は肺痿(はいい)、涎唾(せんだ)多く、心中温温液液(うんうんえきえき)の者を治す。」

条文(現代語訳)

「『外台秘要方』の炙甘草湯は肺の機能不全で、唾や涎が多く、胸がモワモワと熱を持って、ネトネトとして気持ち悪い、胃がムカムカして吐きそうな者を治す。」

炙甘草湯の構成生薬

炙甘草3g、阿膠2g、地黄6g、麦門冬6g、大棗3g、人参3g、麻子仁3g、桂枝3g、生姜1g

  • 炙甘草:補気作用。気を益し、経絡を通じ、気血を利し、心悸を治す。経験的に心気虚に最も効果があるとされている(伊藤良・山本巌)。
  • 炙甘草☓人参☓大棗:体内に水分を留めて滋潤に働く。
  • 阿膠☓地黄☓麦門冬:滋養強壮に働き、陰血を養い、身体を栄養・滋潤する。
  • 麻子仁:潤燥、油性成分により腸管を滋潤し通便する。便が固くなければ除いてよいが、滋潤・鎮静作用を持つ柏子仁・遠志・酸棗仁に変えた方が適切である(伊藤良・山本巌)。
  • 桂枝☓生姜:通心陽・血管拡張作用。気を益し、経絡を通じさせる。

炙甘草湯が適応となる病名・病態

①:保険適応病名・病態【効能または効果】

体力がおとろえて、疲れやすいものの動悸、息切れ。

②:漢方的適応病態

心気陰両虚。脈の結滞、息切れ、疲労感の心気虚の症候+動悸、乾燥感、五心煩熱、寝汗、痩せる、便が硬いなどの心陰虚の症状を伴うもの。

炙甘草湯の運用のポイント

過酷な労働や過度な運動により、身体が痩せ細り陰虚の所見が強くみられる。その為、地黄・阿膠で濃くなった陰血を動かす。

風邪を引いた後、多汗により陰を過度に消耗した後の心悸亢進を改善する。

炙甘草湯が合う方の身体所見に見られるポイント

  • 皮膚乾燥、口渇、便秘
  • 心悸亢進、心下悸
  • 手足煩熱

歴代医家の使用経験・口訣

  • この方は心動悸を目的とす。(勿誤薬室方函口訣/浅田宗伯)
  • 過労などをした後、汗が出て胸苦しく動悸する者。(古方薬嚢)
  • 不整脈の中でも、虚している、熱候とて足が火照る、息が熱く感じる、息が切れる、便秘するなどの症状のどれかがあるものに用いる(龍野一雄)
  • 14歳の男子への使用例。毎朝運動の為自転車に2時間乗る習慣がある。その為か風邪を引いてその時から脈の結滞が起こった。不整脈が始まると動悸がして胸が苦しくなる。痩せており貧血気味。血圧170〜80。腹部心下に動悸が触れる。炙甘草湯10日間服用により結滞も治り、その後1ヶ月服用し、血圧も130〜80となり症状安定し廃薬となる。(臨床応用漢方処方解説/矢数道明)

炙甘草湯の使用上の注意

本方の地黄、麦門冬などの陰薬が多量に用いられてるのは、陰薬が陽薬の助けを借りてよく働くようにである。陽薬の量が多いと、陽の作用が烈し過ぎて滋陰の目的を達しない。(漢方常用処方解説/高山宏世)

また陰の保証である芍薬が含まれておらず、陽薬が走りすぎないように注意が必要。
八綱分類 裏熱虚証(虚証~中間証)
六病位 少陽病
脈証 結代、あるいは細弱
舌証 やや紅、乾燥し痩せて舌苔は少ない

引用参考文献

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