Written by Kazuhiko Noguchi

【傷寒論・原文】わかりやすい解説【太陽病上篇①】

傷寒論解説

こちらの傷寒論解説では、今までの書籍での学習と漢方研究会で習得した内容をベースに、感じたことや自分の考えを記載しています。

なるべくわかりやすい解説を心掛けております。条文によって解説がないものもありますが、ご了承下さい。

【傷寒論・原文】わかりやすい解説【太陽病上篇①】

【傷寒論・原文】わかりやすい解説【太陽病上篇①】

目次

傷寒論を読む時の心得

  • 条文の文言を正しく拾い上げること
  • 条文に無い意図を追及すること
  • 傷寒論をかくにあたって描いていた生理、病理を理解すること
  • 方剤の使い方

弁太陽病脈証并治 上

【訓読】
太陽病の脈証并びに治を弁ず 上

【傷寒論・太陽病上篇解説①】第一節…第一章、第二章、第三章

第一章

太陽之為病、脈浮、頭項強痛、而悪寒。

【訓読】
太陽の病(やまい)為(た)る、脈浮に、頭項(ずこう)強(こわ)ばり痛み、而(しか)して悪寒(おかん)す。

この章は太陽病とはどんな病気か大綱を明らかにしている

  • 太陽之為病:陽病の始まり。中風、傷寒両方含まれる。病の初発に体表面、皮膚表面、上部に働き、表証を示すものを太陽病という。
  • 脈浮:太陽病の症状の中で脈が浮いているというのは、もっとも大切。が、脈浮の他にもう一つ、太陽病を特徴づける他の症状がなければ太陽病と診断できない。ex.脈浮にして悪寒、発熱あるものは太陽病である。脈浮、頭項強痛が揃っていても悪寒がなければ太陽病と呼ぶことはできない。
  • 頭項強痛:太陽経(人が四つん這いになった時、一番良く日光が当たる部位)に沿って表れる。張仲景は頭項と強痛を並列としている。
  • 而悪寒:悪風を兼ねる。悪風寒の証は、陰証と陽証どちらにもある。「而(しか)して」に注目。悪寒が挙げられているに発熱の記載がないのはなぜか?これは、悪寒が先行し発熱することを予想している。熱があっても悪寒を伴なければ太陽病ではない。つまり、悪寒が特に重要な症状であることを示している。

臨床の実際

熱がある患者を診た時は、どんな場合でも必ず悪寒、または悪風があるのかを聞く。悪寒、悪風があれば便秘していても下剤を用いない。

第二章

太陽病、発熱、汗出、悪風、脈緩者、名為中風。

【訓読】
太陽病、発熱(ほつねつ)し、汗出(い)で、悪風(おふう)し、脈緩なる者は名づけて中風(ちゅうふう)と為す。

この章は太陽病中における中風の意義及び病勢、病状を明らかにしている

  • 太陽病:太陽病中における良性なる者を示す。
  • 発熱:陽証。太陽の主とする所は発熱、悪風寒に在る。傷寒論では発熱とあれば、表証の熱である。少陽病や陽明病の熱を発熱と呼ばない。
  • 汗出:皮膚の緊閉強からず。病は軽度良性。自然に出る汗をさす。解熱剤を服用して出る汗と区別が必要。
  • 悪風:悪寒の軽症。悪寒と悪風は浅深の区別がある。
  • 脈緩者:緩は「緊」に相反する。「浮」の一字が抜けている。脈緩者→脈緩者。病状が緩勢であることを意味する。
  • 名為中風:中は傷よりも緩浅、風は寒よりも緩易。傷寒論の中風は今日の感冒のような良性の熱病を指している。

第三章

太陽病、或已発熱、或未発熱、必悪寒、体痛、嘔逆、脈陰陽倶緊者、名曰傷寒。

【訓読】
太陽病、或は已(すで)に発熱し、或は未だ発熱せず、必ず悪寒し、体(たい)痛み、嘔逆(おうぎゃく)し、脈陰陽倶に緊なる者は名づけて傷寒と曰(い)ふ。

この章は太陽病中における傷寒の意義及び病勢、病状を明らかにしている

  • 太陽病:前章の中風に対して、太陽病中における悪性なる者を論ずる。
  • 或已発熱、或未発熱:或は未だ発熱せず、或は未だ発熱するかもしれない。→ここを金輪際発熱しないと仮定する、と成り立つ条文である。
  • 必悪寒:必然。悪寒は初発に必ずある。
  • 嘔逆:気逆して嘔する。
  • 脈陰陽倶緊者:陽証は脈浮緊。陰証は脈沈緊。太陽病では陽病だけでなく陰病に落ちるリスクがあることを示している。浮、沈の文字が省略されている。緊とあるのは前章の「緩」に対する。前章の「汗出で」に対し「汗無き」の記載がないのは、「脈緊」を持ってその内容を含むと考えられる。
  • 名曰傷寒:傷寒は中風より悪性かつ猛悪。之を名付けて傷寒という。
或は已に発熱しor或は未だ発熱せず
→必ず悪寒し、体痛み、嘔逆し
→陽浮脈緊or陰沈緊

※以下の八章は疑ふらくは、傷寒論の本文に非ざらむ。…『傷寒論講義』

第四章
傷寒一日、太陽受之、脈若静者、為不伝、頗欲吐、若躁煩、脈数急者、為伝也。

第五章
傷寒二三日、陽明少陽証不見者、為不伝。

第六章
太陽病、発熱而渇、不悪寒者、為温病、若発汗已、身灼熱者、名曰風温、風温為病、脈陰陽倶浮、自汗出、身重、多眠睡(※)、鼻息必鼾、語言出難、若被下者、小便不利、直視失溲、若被火者、微乃発黄色、劇則如驚癇、時瘈瘲、若火薫之、一逆尚引日、再逆促命期。
– ※底本「睡眠」とあるも『成本』(『註解傷寒論』成無已)及び『小刻傷寒論』(香川修庵)より「眠睡」とする。

第七章

病、有発熱悪寒者、発於陽也、無熱悪寒者、発於陰也、発於陽者、七日愈、発於陰者(※)、六日愈、以陽数七、陰数六故也。
– ※底本「者」を欠くも、『成本』及び『小刻傷寒論』により之を補う。

三陰三陽における、陰陽の基本となる条文

肝になるぐらい重要な条文。この条文を読んで第三章を読む。

  • 有発熱悪寒者、発於陽也:陽証ー発熱悪寒
  • 無熱悪寒者、発於陰也:陰証ー無熱悪寒

第八章
太陽病、頭痛、至七日以上、自愈者、以行其経尽故也、若欲作再経者、針足陽明、使経不伝則愈。

第九章
太陽病、欲解時、従巳至未上。

第十章
風家、表解而不了了者、十二日愈。

第十一章

病人、身大熱、反欲得近衣者、熱在皮膚、寒在骨髄也、身大寒、反不欲近衣者、寒在皮膚、熱在骨髄也。

この章は真寒仮熱、真熱仮寒の大綱を示す

  • 身大熱、反欲得近衣者、熱在皮膚、寒在骨髄也:表熱裏寒→真寒仮熱(三百七十章)通脈四逆湯
  • 身大寒、反不欲近衣者、寒在皮膚、熱在骨髄也:表寒裏熱→真熱仮寒(三百五十章)白虎湯

【傷寒論・太陽病上篇解説①】第二節…第十二章、第十三章、第十四章

第十二章

太陽中風、陽浮而陰弱、陽浮者、熱自発、陰弱者、汗自出、嗇嗇悪寒、淅淅悪風、翕翕発熱、鼻鳴、乾嘔者、桂枝湯主之。

【訓読】
太陽の中風、陽浮にして陰弱、陽浮は熱自(おの)づから発し、陰弱は、汗自づから出(い)づ。嗇嗇(しょくしょく)として悪寒し、淅淅(せきせき)として悪風し、翕翕(きゅうきゅう)として発熱し、鼻鳴(びめい)し、乾嘔(かんおう)する者は、桂枝湯之を主(つかさど)る。

この章では桂枝湯証の総綱を述べている

  • 太陽中風:太陽は陽証。中風は病情緩易。なぜ太陽病でなく、太陽の中風なのか?二章とリンクする内容。
  • 陽浮而陰弱:脈「強・実・洪・緊・弦」の位置を示す内容。脈の一字が抜けている。桂枝湯証には陽証にいく流れと陰証にいく流れ、どちらもある。
  • 乾嘔者:裏の弱い人は、表にある邪の衝撃で乾嘔の起こることを示す。
第三章をマスターしておくと読みやすい。原文では汗の出ていない場合を述べている。桂枝湯は汗の有無に拘らず使用できる。

桂枝湯方桂枝三両 芍薬三両 甘草二両 生薑三両 大棗十二枚右五味、〓咀、以水七升、微火、煮取三升、去滓、適寒温、服一升、服已、須臾、歠熱稀粥一升余、以助薬力、温覆一時許、遍身漐漐、微似有汗者益佳、不可令如水流漓、病必不除、若一服、汗出、病差、停後服、不必尽剤、若不汗、更服、依前法、又不汗、後服少促其間、半日許、令三服尽、若病重者、一日一夜服、周時観之、服一剤尽、病証猶在者、更作服、若汗不出者、乃服至二三剤、禁生冷、粘滑、肉麪、五辛、酒酪、臭悪等物、

【訓読】
桂枝湯の方桂枝三両 芍薬三両 甘草(かんぞう)二両 生薑(しょうきょう)三両 大棗(たいそう)十二枚右五味、〓咀(ふそ)し、水七升(しちしょう)を以て、微火(びか)にて、煮て三升を取り、滓(かす)を去り、寒温(かんおん)に適(てき)し、一升を服す。服し已って、須臾(しゅゆ)に、熱稀粥(ねつきしゅく)一升余りを歠(すす)り、以て薬力を助(たす)け、温覆(おんぷう)一時(いちじ)許(ばか)りならしむれば、遍身(へんしん)漐漐(ちゅうちゅう)として、微似(びじ)して汗有る者益(ますます)佳なり。水の流漓(りゅうり)したる如くならしむべからず。病(やまい)必ず除かれず。若し一服、汗出(い)で、病差(い)ゆれば、後服を停(とど)め、必ずしも剤を尽(つく)さず。若し汗せざれば、更に服すること、前法に依(よ)る。又汗せざれば、後服は少しく其間を促(うなが)し、半日(はんじつ)許りにして、三服を尽さしむ。若し病重き者は、一日一夜(いちじついちや)に服し、周時(しゅうじ)之を観(み)る。一剤を服し尽し、病証猶(なお)在る者は、更に作り服す。若し汗出でざる者は、乃ち服すること二三剤に至る。生冷(せいれい)、粘滑(ねんかつ)、肉麪(にくめん)、五辛(ごしん)、酒酪(しゅらく)、臭悪(しゅうあく)等の者を禁ず。

桂枝湯を飲んだら、うすい粥をすすって薬力を助けてやるとよい。この場合、布団を被って温かくして、全身から汗がにじむようにするとよい。水が流れるほど汗を出してはよくない。もし一服で汗が出てよくなったら飲む必要はない。それでも汗が出なかったら、あとで飲む分は時間の間隔を詰めて、半日で三服を飲みつくすようにする。もし病がよくなければ、また新しく作って、二、三剤飲んでよい。この場合、果実、冷たい食べ物、ぬるぬるしたもの、肉、辛いもの、酒、牛乳、バター、悪臭のあるものは食べない方がよい。

第十三章

太陽病、頭痛、発熱、汗出、悪風者、桂枝湯主之。

【訓読】
太陽病、頭痛、発熱し、汗出で、悪風する者は、桂枝湯之を主(つかさど)る。

この章では桂枝湯の正証を論じ、而して後章の変証を論ずる

  • 太陽病:第一章の「頭項強痛」を承けて、桂枝湯の正証を論じ、而して後章の変証を論ずる。第一章とリンクする。その為、冒頭が太陽病と為す。
  • 頭痛:本方の主な特徴。
  • 汗出:前章の者は、未だ必ずしも汗出ず。この章の者は既に汗が出ており、未だ和せざる者なり。
  • 桂枝湯主之:太陽の位における浅証にして、之を桂枝湯の正証と為す。

前章で脈を上げたので、脈浮弱を省略している。傷寒論の通例。

臨床の実際

桂枝湯は発汗剤ではなく、体表の機能の衰えてる時に、これを鼓舞する効がある。麻黄湯や葛根湯で発汗した後、まだ悪寒悪風などの表証が残って身体がさっぱりしない場合、桂枝湯が有効な場合がある。

第十四章

太陽病、項背強、几几、反汗出、悪風者、桂枝加葛根湯主之。

【訓読】
太陽病、項背(こうはい)強(こわ)ばること、几几(しゅしゅ)、反(かえ)って汗出で、悪風する者は桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)之を主る。

この章では桂枝湯の一加味方を示す

  • 太陽病:第一章の「頭項強痛」を承けて、前章の「頭痛」に対し、「項背強」を挙げ、更に桂枝湯の一加味方を示す。第一章とリンクする。その為、冒頭が太陽病と為す。
  • 項背強、几几:陽病を述べている。項部及び背部の強張り。几几は形容詞。
  • 反汗出、悪風者:「反(かえ)って」に注目。陰陽で読む。項背強、几几(陽病)、葛根湯証と区別する。反汗出、悪風者は陰病であるよと。
  • 桂枝加葛根湯主之:桂枝湯証に比べれば僅かに深く、葛根湯証に比べれば尚浅い。即ち病位は両者の間の位は、桂枝加葛根湯主之となる。
※以上の三章は一節である。十二章では桂枝湯証の総綱を述べ、十三章では桂枝湯の正証を論じ、十四章では変証である桂枝湯の一加味方を示す。

桂枝加葛根湯方葛根四両 芍薬二両 甘草二両 生薑三両 大棗十二枚 桂枝二両右六味、以水一斗、先煮葛根、減二升、去上沫、内諸薬、煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗、不須啜粥、余如桂枝湯。

【訓読】
桂枝加葛根湯の方葛根四両 芍薬二両 甘草二両 生薑三両 大棗十二枚 桂枝二両右六味、水一斗(いっと)を以て、先ず葛根を煮て、二升を減じ、上沫(じょうまつ)を去り、諸薬を内(い)れ、煮て三升を取り、滓(かす)を去り、一升を温服す。覆(おお)ふて微似(びじ)して汗を取る。粥を啜(すす)るを須(もち)ひず、余は桂枝湯の如くす。

【傷寒論・太陽病上篇解説①】第三節…第十五章、第十六章、第十七章

第十五章

太陽病、下之後、其気上衝者、可与桂枝湯、方用前法、若不上衝者、不可与之。

【訓読】
太陽病、之を下(くだ)して後(のち)、其の気上衝する者は、桂枝湯を与ふべし。方前法を用ふ。若し上衝せざる者は、之を与ふべからず。

この章では桂枝湯の一活用を示す

  • 太陽病、下之後:「後」がついた場合は、下したり発汗したりした為にそれまでの証が変化したことを示す。下すべき証を下したところ、下すべき証は消え去り、証が変化して上衝するようになった。これは誤治ではない。太陽病で、悪寒、発熱、脈浮などの表証がある場合は、下剤で攻めてはならない。
  • 其気上衝者:上衝とは上に昇るはずの陽気の不足により発生する症状を指す。のぼせ(仮性の興奮)、脈弱、ほっぺ少赤、頭痛、めまい、動悸etc
  • 可与桂枝湯:桂枝湯を与えて、その後の証の変化をみる。上衝を治すには桂枝甘草湯、または桂枝単品でもよい。だが、実際に下して後に桂枝湯を用いる例は少ない。
  • 若不上衝者、不可与之:上衝が現れない者は、或いは変証するかもしれない。其の場合、動静をよく観察し、証に随って之を治す。

第十六章

太陽病、三日、已発汗、若吐、若下、若温針、仍不解者、此為壊病、桂枝不中与也、観其脈証、知犯何逆、随証治之。

【訓読】
太陽病、三日(さんじつ)、已(すで)に発汗し、若(も)しくは吐(と)し、若しくは下し、若しくは温針(おんしん)し、仍(な)ほ解(かい)せざる者は、此れを壊病(えびょう)と為す。桂枝与ふ中(あた)らざるなり、其の脈証を観て、何れを犯せるの逆なるかを知り、証に随(したが)ひて之を治(ち)す。

この章では薬方の運用上の注意を言及している

  • 太陽病、三日:太陽病では発病初期の三日間は一般に発汗を行う時期。
  • 已発汗、若吐、若下、若温針、仍不解者、此為壊病:汗、吐、下、温針この中のどれかを施しても、それが誤治であれば壊病となる可能性がある。
  • 桂枝不中与也、観其脈証、知犯何逆、随証治之:誤治により壊病と化した変証は、桂枝湯を与えることはできない。其の場合の患者の状態をよく観察し、どのような逆治をやったか知って、証に随って之を治すべきである。

第十七章

桂枝本為解肌、若其人脈浮緊、発熱、汗不出者、不可与也、常須識比、勿令誤也、

【訓読】
桂枝は本(もと)解肌(かいき)と為す。若し其の人脈浮緊に、発熱し、汗出でざる者は、与ふべからざるなり。常に須(すべか)らく此(これ)を識(し)り、誤(あやま)らしむること勿(なか)れ。

以下の三章は、疑ふらくは、旧章に非ざらん。…『傷寒論講義』

第十八章

若酒客病、不可与桂枝湯、得湯則嘔、以酒客不喜甘故也、

第十九章

喘家、作桂枝湯、加厚朴杏子佳、

第二十章

凡服桂枝湯吐者、其後必吐膿血也、

【傷寒論・太陽病上篇解説①】第四節…第二十一章 第二十二章

第二十一章

太陽病、発汗、遂漏不止、其人悪風、小便難、四肢微急、難以屈伸者、桂枝加附子湯主之。

【訓読】
太陽病、発汗し、遂(つい)に漏(も)れて止(や)まず、其の人悪風し、小便難(なん)に、四肢微急(ししびきゅう)し、以て屈伸し難き者は、桂枝加附子湯(けいしかぶしとう)之を主る。

この章は第十六章を承け、桂枝加附子湯の主治を論ずる

  • 太陽病:十六章とリンクする。
  • 発汗:桂枝湯の証。だが、微汗ならず大量に発汗し、陰病に落ちる。
  • 遂漏不止:汗の漏泄が止まない。
  • 其人悪風:外証未だに和せず、悪風する。
  • 四肢微急:四肢拘急。
  • 難以屈伸者:屈伸できず痛みを兼ねる。
  • 桂枝加附子湯主之:桂枝湯加附子→陰病に属す。陰とともに陽気も失う為、桂枝加附子湯を使う。(陰陽絶対量50%以下)

太陽病から少陰病に落ちていく流れを感じること。この証、もっと深く進行すれば芍薬甘草附子湯に至る。

桂枝加附子湯方
於桂枝湯方内、加附子一枚、余依前法

【訓読】
桂枝加附子湯の方
桂枝湯方内に於て、附子一枚を加(くお)ふ。余は前法に依る。

第二十二章

太陽病、下之後、脈促、胸満者、桂枝去芍薬湯主之、若微悪寒者、去芍薬中加附子湯主之。

【訓読】
太陽病、之を下して後、脈促に、胸満(きょうまん)する者は、桂枝去芍薬湯(けいしきょしゃくやくとう)之を主る。若し微悪寒(びおかん)する者は、去芍薬方中加附子湯(きょしゃくやくほうちゅうかぶしとう)之を主る。

この章は第十六章を承け、桂枝去芍薬湯に至る者、及び去芍薬加附子湯証に至る者を論ずる。

  • 太陽病:第十六章とリンクする。
  • 下之後:下すべき証を下した後。故に「反って」と言わない。しかしながら、下した後に上衝の証が起こる。
  • 脈促:不規則な間欠がある脈。急いで走ってる人がつまずくような脈。この脈候は表未だ解せざる時に現れる。
  • 胸満者、桂枝去芍薬湯主之:下した後、上衝する証に芍薬を去った桂枝去芍薬湯がよい。本方は胸滿の証を起こす者を治す。この証、桂枝湯証に比べると更に一級劇しき者なり。
  • 若微悪寒者、去芍薬中加附子湯主之。:陰病による悪寒。下した後の悪寒は、皆虚寒である。その為、附子を加えた去芍薬中加附子湯(桂枝附子湯)がよい。

腹滿には芍薬を倍にした桂枝加芍薬湯で腹中の気を調和し、胸滿には芍薬を去り、桂枝の力を専らにし、桂枝去芍薬湯で胸中の気を調和する。

桂枝去芍薬湯方於桂枝湯方内、去芍薬、余依前法、桂枝去芍薬加附子湯方(※)於桂枝湯方内、去芍薬、加附子一枚、余依前法。
– ※底本桂枝去芍薬加附子湯の方を欠く。今『小刻傷寒論』(香川修庵)より之を補う。

【訓読】
桂枝去芍薬湯の方桂枝湯方内に於て、芍薬を去る。余は前法に依る。桂枝去芍薬加附子湯の方桂枝湯方内に於て、芍薬を去り、附子一枚を加ふ。余は前法に依る。

※以上の二章は一節である。

引用参考文献

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