Written by Kazuhiko Noguchi

【漢方で胃腸の不調を改善】上部消化管【症候鑑別】

この記事では、胃の不調(上部消化管)患者さんから訴えの多い症候(症状)から推測される病理、使用する方剤をまとめています。

【漢方で胃腸の不調を改善】上部消化管【症候鑑別】

【漢方治療】上部消化管【症候鑑別】
胃腸の不調は漢方薬で改善できるケースが多いと感じています。患者さんから訴えられる症候→病理と導けるよう、まとめてみました。

①:【漢方治療】上部消化管【症候鑑別】

患者さんが訴える症候

  • むかつき
  • もたれ
  • もたれ
  • 胸やけ
  • 逆流
  • 曖気(ゲップ)

考えられる病理

  1. 食滞…消化不良、過食によるもの。方剤:保和丸
  2. 胃熱…辛辣なもの、脂もの、飲酒(酒は湿熱の水)の摂取によって起こる。方剤:黄連解毒湯、三黄瀉心湯などの黄連剤。これらが慢性化すると、半夏瀉心湯(お腹が弱い、飲酒歴が長い)になる。
  3. 胃陰虚…胃熱が続き、胃が乾いてくる。高齢者に多い。萎縮性胃炎(胃液や胃 酸などを分泌する組織が縮小し、胃の粘膜が 萎縮した状態)。
    方剤:麦門冬湯、参苓白朮散。人参で補陰+補気。後天の精を増やす。万能。
  4. 肝気犯胃…精神的なストレスが胃を犯す。熱状あり(加味逍遥散、竜胆瀉肝湯など)。熱状なし(半夏厚朴湯、柴胡桂枝湯など)

②:【漢方治療】上部消化管【症候鑑別】

患者さんが訴える症候

  • 胃痛
  • 吐き気
  • 痞え
  • 食欲不振

上記の症候を掘り下げていきます。まずは胃痛から。

【胃痛】考えられる病理

  1. 食滞、胃熱、胃陰虚。痛みの激しさは胃陰虚より食滞、胃熱の方が程度が強いことが多い。
    食滞、胃熱>胃陰虚
  2. 肝気犯胃…精神的なストレスが胃を犯す。方剤:柴胡疎肝湯、四逆散。枳実…穀道を通す
  3. 胃寒…アイス、ビールを飲んだ後に起こる。痛みなら安中散(延胡索、良姜)、吐き気なら呉茱萸湯(呉茱萸、生姜)
    下痢なら人参湯(白朮、乾姜)
  4. 胃陽虚…内蔵が冷えている。胃の平滑筋も薄く、消化機能が弱い。

寒証には2つの証がある

  • 虚寒…素体に冷えが内在している。筋肉量少ない。通年性。
  • 実寒…外因の影響で、冷えによる症状が発生する。
外因の影響…冬場の寒さ、冷房、アイスコーヒーを飲む、アイスを食べるなど
虚寒証の方は実寒証になりやすい。

胃寒、胃陽虚に使用する方剤

虚寒 実寒
人参湯 人参湯
大建中湯 大建中湯
呉茱萸湯 呉茱萸湯
真武湯 五積散(病位は経絡)
当帰芍薬散 当帰四逆湯(病位は経絡)
苓桂朮甘湯 安中散

【痞え(心下痞)】考えられる病理

  1. 食滞、胃熱(実)、肝気犯胃
  2. 便秘…臓気が通じなくなり、胃の降気ができない。方剤:承気湯類
  3. 胃気虚…運化機能の働きが弱い。術後、病後に頻発。食欲不振、胃の膨満感など。方剤:六君子湯。人参は虚証の痞え(心下痞)に良い。
  4. 胃内停水…胃に溜まった余分なお水。胃がチャプチャプする。気持ち悪い。方剤:茯苓飲合半夏厚朴湯

【吐気、嘔吐】考えられる病理

  • 食滞、胃寒、胃熱、肝気犯胃
  • 妊娠悪阻…高温期による熱。方剤:黄連末、小半夏加茯苓湯(冷水で服用)口を氷で冷やす。
  • 乗り物酔い…方剤:小半夏加茯苓湯
  • 二日酔い…方剤:五苓黄解
  • 痰飲による胃の気滞…食事による影響は大(甘味嗜好は脾胃の状態を悪くする)方剤:二陳湯(半夏・陳皮)
  • 痰熱…痰飲が熱を持つ。方剤:温胆湯

【漢方で胃腸の不調を改善】まとめ

今までの経験と知識を、自分の勉強のためにもまとめてみました。

様々な研究が進み、「第2の脳」とも言われる胃腸。胃腸は身体の土台、源になります。僕は胃腸をもう一人の自分だと思って、労るようにしています^_^